転勤についていく家族のきもち

先日ある方から相談をうけた。

ご主人の転勤がほぼきまったらしい。来週には辞令がおりるとのこと。いろいろ聞くと辞令から2-3週間くらいで引っ越しをして次の勤務地に行くそうだ。

その2週間で,まだ見ぬ新しく生活をする家を探す,子供たちの学校に転入・転出届を出す。その他もろもろの生活基盤を移さなければならない。場合によっては(いやほとんどのケースだと思うが)実際に見ずに新居を決めなければならない場合もあるそうだ。

「辞令が正式に下りるまで,何も手につかないし,集中できない。」

「子供たちも新しい勤務地に行くのをいやがっている。」

「これを2,3年ごとに繰り返すのは辛い。」

人は不確定な未来に不安を感じる。しかも自分のことでないので、コントロールすることもできない。不確定な将来を待ち、結果的には受け入れる流れになることがわかっているというあきらめかつ苛立ち。しかも、引っ越しをいやがる子供をもつ場合、説得しなければならない。これが何度もおきるということはさぞお辛いであろうと感じる。

私自身、配偶者の転勤に帯同するといった経験はない。

しかし、結婚する際に、配偶者の仕事を優先し、自分が寝食忘れて働いてもいいと思っていた東京での仕事を辞め、親族も知り合いも友達もいない未知の土地にきたという経験はある。

仕事を辞め、結婚をし、新しい土地にきた最初の数週間はなんともいえないモヤモヤ感と早く社会とつながりたい焦りの日々だった。

結婚して1か月くらいは、自分のアイデンティティーを感じない時期を過ごした。慣れない苗字。所属がないという焦り。覚悟していたとはいえ、人生はじめての経験だった。

夫以外の人と話すことはなく、八百屋のおじさんと話したりしただけで数日ぶりに誰かと話ができたと、涙がでそうになったことを憶えている。仕事で忙しい夫からは、「なんとか自分で人間関係をつくれ」と言われた。

話をもとにもどそう。

配偶者の転勤の場合は、家族はもちろん帯同が当たり前の雰囲気がまだまだあるように見受けられる。仕事なんだから仕方がないでしょという雰囲気がほとんどだ。でも、不安で新しい土地に引っ越すことに躊躇している家族の不安要素を少しでも払拭できたらどんなによいだろうか想像したことはあるだろうか。現実には住宅補助などいろいろな観点から旦那さんの転勤や仕事に合わせて人生を送らなければならない奥さんたちが、残念ながら今の日本では大半だ。そんな時に、相手の心にちょっとでも寄り添い、夫婦の間でも日々の感謝の言葉がいえると、みんな家族はチーム一丸となって旦那さんを応援してくれるにちがいない。ちょっとした気遣い、そしてコミュニケーションで物事は良い方向に変化することができる。

会社からの命令だから仕方がないだけでよいのか。今回こういった辞令がでたけれど、お父さんはこういった目的をもって仕事をしているんだよ、といった説明を家族にしてもいいのではと私は考える。子供は小さいし、配偶者は理解しないとは思わないでほしい。だって、みんなそれぞれの生活をもっているのだから。相手の気持ち、共感、話し合いが十分ないとしたら。。。ついていかなければならない家族には未完了感、不安感というのが残ってしまい、やがてそれがあきらめ、無力感、自己肯定感の低さへとつながっていくのではないだろうか。

転勤に帯同する家族がいやがったらどうしたらいいか、という相談をうけたことがある。

もしご家族が、新しい土地にいくのに不安を感じるのであれば、新しい土地について情報を集めてみる。どんな環境、交通手段、子供の学校環境などなど。事前にわかるだけでも人は安心するものだ。子供と一緒に地図などみながらすると、少しワクワク感がもてるかもしれない。新天地で何か楽しみを見出すことができたら辛さも楽しみに変化していく。

次が見えない不安感をご家族が感じる場合。わかる範囲でいいので、家族のライフプランをたててみる。家族の年齢別にどんな行事があるのか。子供が何歳までにひとつの場所におちつくのか。それぞれの目的意識、目標などを書き出して家族内で話し合う。この際、いつもはそんなに考えないであろう家族の在り方、将来を考えるということもできる。ピンチをチャンスに変えてみる。

もし会社側でできることがあるとしたら、帯同してくれるご家族のみなさんの不安を払拭できるよう現地の情報を提供するなど、ソフトサイドのサポートも積極的に考慮するといったことも視野に入れるのはいかがだろうか。社員のキャリアプランにも転勤の先を考えることができるような話し合いがあると、社員のモチベーションアップにもつながる。家族も少し先が見えて安心する。家族が転勤を後押ししてくれると、社員の悩みもなくなり、よりよい環境で仕事に集中できるということだ。会社としても家族の協力が必要不可欠化と思う。転勤を家族が同意しないので転職を考える人もいる。人材流出リスクを考えると、ちょっとした心遣いが必要なのかもしれない。

結局、相談された方は、ご家族でよく話し合い、ご家族にとってベストな答えをみつけ、残りの数週間を実に有意義に過ごしている。ほんとに頭が下がる。遠方にいっても連絡を取り合おうと約束をした。距離的には離れてしまっても、いつも応援したい。

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